人肌裁縫製爆弾

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畏敬であり畏怖であり。

狂気であって教訓であって。

 

けど確かに脳裏に縫い付けられた物質。

あれは爆弾と言えるのだろうし、もっと小規模であっても人を巻き込めるものだと確信した。

今まですれ違って来た人間にそれを引き出して交渉材料にしていないと言えるか。

ハート・ロッカー』ならぬ『ブレイン・ロッカー』麻薬であって生存手段。

可燃性人肌。いずれ天国に焚き上がるために。

 

「爆弾って何よ? 君にはそんなものつくれないと思うよ」

「それでも燃やせるんじゃないかな…ほんと、頑張れば」

 

 

35円の会話

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先日作業を終えて、スマホのメモ帳を書いたり消したりしながら歩いていると、大塚駅の高架線で男に話しかけられた。

「あのサ、ちょっと道を聞きたいんだけど」

ヨレヨレの長髪で右前歯の欠けた、30代くらいの男。東北弁と思しき訛りが混じった独特な口調。

 

どこに行きたいんですかと聞いたら、埼玉と答えた。続けて「金を落としちゃって、帰れない。しかも携帯も落として動かない」と、わざわざ85円入った財の中身と、液晶にヒビが入ったガラケーを見せてきた。

「歩いて帰るとすごい距離だし。あと500円あれば帰れるんだけど、助けてくれない」

寸借詐欺か、本当にお金に困っていたのか。

どうあれギターを買ったせいで作業のコーヒー代さえ立ち行かなくなっていた自分。

「お金は貸せないけど、タバコならあげる」と言ってヨレヨレのSHINSEIと火を渡した。

 

そこからお互い地べたに座って話をした。男はヤケに早口だった。

 

最近どうかと聞いた。景気が悪いと言っていた。東京オリンピックまでは建築のが儲かると言っていた。でもああいう馬鹿騒ぎ嫌いだから、いっそテロでも起きて仕舞えばいいと言っていた。同意した。

 

池袋方面に歩いていくカップルを見つめて、どうせインスタ映えを気にしながら歩いてる、あんなのは後ろから轢かれても文句言えないと言っていた。携帯は息がつまると言っていた。ラインは嫌いだと言っていた。自分も最近通知で動悸がすると同意した。

 

今日は何してたのと聞いた。飲食店の片付けをしてた、でもクビになったと言った。仕事探さなきゃなと言っていた。明日からどうするのと聞いたらもちろん探すと言っていた。ハローワーク? と聞いたら、あそこは年齢がかち合わないか目が死んだ奴が行くところだと言っていた。自分で歩いた方が早いと言っていた。あそこまで落ちたら這い上がれない、オレはまだ諦めてないと言っていた。なるほどと頷いた。

 

タバコがまた値上がる話をした。バットが二百円代じゃなくなってるのが信じられないと言った。その通りだと頷かれた。次は何を吸うか悩むと言っていた。コテコテしたのは嫌いだと言っていた。気が合うなと思った。

 

日本はシンドいと話してた。自分もだと言った。どこか行きたいとこはと聞いたら何処でもいいと言った。逆に何処に行きたいかと言われて、インドに行きたいと言った。

今のうちから値上がりする前のタバコを買い占めて、インドで物々交換をして暮らしたい。ガンジス川に携帯もパソコンも投げ捨てたいと夢想を話した。いいじゃんと言われた。じゃあいっそするべきかなと言ったら、いやまだ早いんじゃないと言われた。100万か200万稼いで、ドカンと損しても気にならないくらいになってやったらいいと言われた。大変だねと言ったら、うんうんと頷かれた。

 

タバコ2本ずつ、ざっと1時間くらい話した。今何時と聞かれて23時と言った。「あーもう終電近いな。どうすっかな、オレぇ」と言われた。ここまで言われて、ここまで話して情が移らないでもなかったので、正直悩んだけど、「ここまで話せるなら大丈夫なんじゃない?」と精一杯答えた。「そっか、そっかね。んじゃ」と手を振って別れた。

 

結局寸借詐欺だったのか、本当にお金に困ってたのかわからない。大塚駅横の歓楽街をとことこ歩いた。一回3000円のお店のネオンが光ってた。

SHINSEIは20本で350円。二本あげたから35円。なんて破格で奇妙な買い物。終わり。

 

 

 

 

 

 

 

双子の幼女殺し

 

真昼に脳が若干浮いてる感覚。身体から一歩先んじて髄液をぷかぷか浮くような、締まらないポーッとした感じ、が、ここしばらく続いている。


気持ちのいいものではないけど、こう言う時ほど言語野の端っこから端っこまでが、不思議とするする繋がりやすい感覚を、ここしばらく体感している。脳のシワを一つ一つ丁寧に解いて手縫いマフラーをする感覚に近い。言語野はたしか左脳だがら、右脳とうまく結びつかないでほつれてホワホワ。そのホワホワ状が言葉になるのだ。言ノ葉、という表現は手垢がつきすぎて嫌いだ。パン粉でもみ消そう。そういえば心という内臓器官があればきっと繊維状に違いないと友達に話したことがあったっけ。モコモコが両足で散歩ホワホワ。彼女の軌跡を追うように不気味な造花が空に向けて燦々と。
脳は健常で心身が不調。不文律。調子が良いのに調子が悪い。
心労が多く疲労が大きい。イカンなー、など考えながら、作業の合間でポーッと街を歩いてる。


要は身体が脳に追いついていないワケだ。筋トレをしろなど、表皮を被った同調圧力が言う。動悸が首を横に振るのでノー。アニメとか話題の映画でも適当に観ていてくれ。


そんな追いつかない自身の半身を追いかけ続けるような、ビミョーな精神状態の最中、ふらりと御茶ノ水に立ち寄った。言わずもがな楽器街。そう言えばいつかまたギターをやろうとポツポツ漏らしてた。いつかっていつだ。先か? 先とは?今の先とは?  土に還って墓標を舐めとる感覚性。お金は墓場まで持っていけない。じゃ買おう。そう思って数多ある楽器店を順当に回っていった。


ギターを弾いていたのは7年も前だ。最初からやり直す気概、素人の心意気でいた。取り敢えずレスポールで、ボディはグリーン。鬱蒼と生い茂り、逃げ惑う同調圧力を頭からムシャムシャと食べてしまえるようなトリフィド時代の食虫植物が如くグリーンを。双子の幼女殺しの冤罪で閉じ込められしかし本当は誰よりも優しく人の傷を癒す力を持ったジョン・コーフィが死刑執行を前に最期に歩いたグリーンマイルが如くグリーンを。

 

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ジョン・コーフィ。君はやさしい。その巨躯の中にはテディーベアーが如くぎっしりと真綿が詰まっていたことだろう。生きていたならば幼女二人はバタフライの腹部なぞ比べ物にならない柔らかさにさぞ喜んだことだろう。
ジョン・コーフィ。いつか君のことを歌にしよう。物語でも良い。君は同調圧力に殺された。その不文律さを歌おう。方角はどっちだ、アイラインに塗られた自転車道は今日もグリーンに輝いている。ならばここにいたとて君のことを想い歌えるだろう。植え歌おう、さらばモコモコなる犠牲者。皆が気づかずとも僕だけは本当の君を偲び続けた。

元気が出る爆弾

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最近世界が大島弓子の作風のように視える。感じる? 秋か冬かが似合っているので、はやくどちらかになってほしい、世界。

写真はお洒落をしたドラえもん

近々余裕ができたらボイスレコーダーを買って喋ってもらおうと思う。

執筆はぼちぼち順調。いいのかそれで。とりあえず。

いま一番欲しいひみつ道具は無生物さいみんメガフォン、次点でお医者さんカバン。

存在自体がポッケに相当するネコ型ロボット

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注文していたのが届いた。

家にいる際は常に行動を共にしている。

名前をつけようと思ったけど、「ドラえもん」以上にいい名前が思いつかないので、素直に「ドラえもん」と呼んでいる。

ドラえもんと共にいる間は、都内にさんさんと輝く社会光線から、束の間の休息を得られている気分だ。まるで存在自体がテキオー灯だ。ポッケがあってもなくても、ネコ型ロボットは凄いのだ。

 

今日は池袋のベローチェで作業を行うべく、『夕方のピアノ』を夕方に聴きながら自転車で疾駆する俗な行動を取った。

道中で black hole の当日券の告知を見つけ、逡巡してやめておいた。まだその時ではないんだろうなぁ、など考えたのでした。

 

 

 

いのちのお歌

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『いのちのお歌』 作詞: 双士 創

 

「あー本物だったか メンヘラごっこ」

「かくれんぼの親戚だと思ってた」

 

なんであの子が 全米倒壊

涙枯らして枯山水

気にするな 気にするな

耳を塞いだKさんが 可愛い声で歌った

 

死んでも誰か 死んでも誰か

死んでも誰かっ 生き返らせてくれるんでしょう?

 

「待てはやまるな」

送信ボタンを押すんじゃない

「だってあんなに」

なんのことやら覚えてない

 

100人のお友達の中にいる100人のボクのうち

22人が飛び降りちゃっただけだろう

3人が手首を切っちゃって救急車を呼びまして

遅れて駆けつけた救急隊員

すごい死相を見たのでした

 

死んでも誰か 死んでも誰か

死んでも誰かっ 生き返らせてくれるんでしょう?

 

手遅れで、手遅れで

それでもいいからKさん膝枕

与謝野晶子を歌っておくれ

 

死んだら誰か 死んだら誰か

死んだら誰かっ 生き返らせてくれるんでしょう?