骨盤の貝合わせ

f:id:tsukuru_soushi:20181102210349j:image

 

「●●くん、昨夜は何をオカズに使ったの? 私は X'Japan の hide かな。死因は首吊りだったけど、リストカットしたところを想像したの。ほら、彼って髪が紅かったじゃない? 毛先が血色に浸って波紋がぴちゃぴちゃしてる様を想像したの。部屋の隅にはギターが転がってて、先端も紅く染まってるの。けどそれは彼の血じゃなくて、私の破瓜の血。彼ったら直前に私のあそこにヘッドを突き立てたんだ。入らないって言ったんだけどね、ズブブっ て無理やり。まるでせっかく産んだ赤ちゃんだけど、やっぱり顔が気に入らなくて押し戻し た感じ。ひょっとしたらあのギター、ボディは私の骨盤で作られたんじゃないかな。弦はリ ンゴの香りの髪で編まれたの。ピックはほら、親指の爪を剥いだわ。マニキュアはピンク。 私をイかせるだけイかせて、自分はさっさと死んじゃうなんてね。アーティストってわから ないわ。仕方ないから、彼の冷たくて青白くなった腕にこすりつけて達したの。愛液でちょ っと温かくなったのがすごかったな。どう、とってもロマンチックなオナニーでしょう?」


...あぁ、それはスゴイな。てっきり床や机やらで済ませてると思ったのに、そんなクールな 人だったのか。


近しい本、読んだことあったっけ。谷崎潤一郎? 江國香織? 昨今のSNSで流行ってる 作家の自虐レポマンガ? いや、違う。これはきっと新しい文学だ。ジャンルだ。前橋里奈子の赤裸々エッセイ。いや、退屈だな。紅裸々エッセイだ。経血の紅に、裸々はハダカハダ カと読ませる。ベニハダカハダカエッセイ。純文学ならぬ純血文学。もとい経血文学。彼女を題材にして、彼女を綴って初めて完成する、まるで新新宗教が如く高潔さ。すごいな、ノ ーベルなんて夢じゃない。というかノーベルなんて正直ダサくて陽的すぎる。世界的で俗的で脚光を浴びすぎて、文学の本質が何たるかを忘れている。紅裸々エッセイこそが真理。これは文章にしないと、文学界の大きな損失だと言えるだろう。でも彼女は文章を嗜まない。


じゃあしょうがない、僕が書かないと。大儀を果たさないと。さては彼女、僕がこっそり作家志望の夢を秘めていることを知っていて、僕に話しかけたんだな。なんて魔性な女なんだ。艶やかだ。やっぱりこれは僕が紙頁に刻み込まなきゃ。万年筆で削り取ったっていいくらいだ。インクにはそうだな、手首の血を使っても良い.........。

 

あ、ごめん、返事が遅れたけど、ボクはオナニーのおかずに君を使ったことは、一度だってないからね。